発達障害に気づかない大人たち
2010年1月
星野仁彦
大人の発達障害
・机の上が片付けられない
・忘れ物やミスが多い
・約束や時間を守れない
・すぐにキレる
・空気が読めない
・大人になってから顕在化する事が多い
15歳未満の子供の1割以上が何かしらの発達障害の症状を示すという結果も出ている
その多くが、発達障害と気づかないまま大人になっている
発達障害には
・注意欠損、多動性障害(ADHD)
・広汎性発達障害(PDD)
・高機能自閉症(HFPDD)
・自閉症スペクトラム症候群(AS)
・アスペルガー症候群(AS)
・自閉症
・学習障害(LD)
・知的障害(精神発達遅滞)
・発達性協調運動障害
この発達障害が原因となって、うつ病、不安障害などの合併症を引き起こすこともある
大人の発達障害は治す事が可能
発達障害は成績優秀な子ほど見過ごされる
注意欠損、多動性障害(ADHD)
発達障害とは、注意力に欠け、落ち着きがない、時に衝動的な行動をとる
広汎性発達障害
自閉症、アスペルガー症候群は対人スキルや社会性に問題などを含む
学習障害
ある特定の能力(読む、書く、計算)の習得に難あり
※これらは生まれつき、あるいは乳幼児期に何らかの理由
遺伝、妊娠中、出産時の異常、乳幼児期の病気
などで脳の発達が損なわれる
本来へ成長とともに身につくはずの言葉や社会性、感情コントロールなどが未発達、未成熟、アンバランスになるために起こると考えられている
実際には、養護学校や特別支援学級ではなく、普通学級に在籍して、そのまま進学、社会に出ていく
発達障害のイメージ
知能に遅れがあり、学校の勉強についていけない。しかし実際には授業についていけている、成績優秀な子供もいる
発達障害の子供
一般的にストレスに対する抵抗力(ストレス耐性)が弱いため、いじめにあったり、不登校などになりやすい。鬱や睡眠障害を併発することもある
うちの子は普通の子と考える親が圧倒的に多い
学習時代には特に問題にならなかった事が一気に顕在化して、周囲との軋轢を生む場面が増える
手先や全身の協調性の運動
例)A男の子
言葉の発達が遅く、3歳頃までは会話ができない、手で縄を回しながらタイミングよく飛ぶ縄跳びは典型的な協調運動がうまくできず、楽器や工作、体育も苦手、方向音痴で地図が読めず、よく迷子になる、忘れ物も多いこともある
わがままですぐキレる、イライラすると理由なく殴っていた
大人の発達障害
適切な薬物療法やカウンセリングなど受ければ、十分治療は可能の可能性はあると考えられている
法律
2005年4月:発達障害者支援法の施行
(発達障害者の自立と社会参加を目指す)
2007年4月:特別支援教育が学校教育法に盛り込まれる
2008年:保育所保育指針が40年ぶりに改定
発達障害
とてもわかりにくく、見えない障害であるため、当事者はその言動から、怠け者や変わり者、身勝手なわがまま人間と思われることが多いなど周囲に誤解されやすく、理解や協力が得にくい面がある
※適切なケアとサポートを行うには、周囲の正しい理解と協力が不可欠
発達障害がわかりにくいのは何故?
原因には、脳の機能障害にあるとされている
中枢神経系の発育、発達が何らかの理由(遺伝、妊娠中、出生時の異常、乳幼児期の病気など)、生まれつき、乳幼児期に損なわれ、言葉、社会性、協調運動、基本的な生活習慣、感情や情緒のコントロールなどの発達が未熟、アンバランスになるために起こると考えられている
※一次的には、家庭環境や本人の性格などは関係ない。あくまで本質的な原因は脳であり、心の問題ではないことを理解しておく必要がある
発達障害には、障害の種類が多く多様であるだけではなく、複数の障害の特徴を併せ持つケースが多く、発達段階により大きく変わってくる
幼児期、学童期、思春期、青年期、成人期と発達するにつれて症状は変化
知能指数の重症度によっても違ってくる
二次的には、家庭環境や学校環境など心理社会的要因によっても障害の現れ方に違いがあり、思春期、青年期、成人になって、うつ病や不安障害、各種依存症(薬物、アルコール)、パーソナリティ障害など、合併症や二次障害を示すケースが少なくない
ことわざ
群盲像を評す
同じ像であっても、足を触った盲人は「木」だと言い、鼻に触れた盲人は「蛇」だと言ったという故事から「論ずる対象が同じであっても、その印象や評価は人それぞれ異なる」あるいは「わずか一部分を取り上げたところで、その事象のすべてがわかるわけではない」という意味
軽度の発達障害には主に3つの理由
①予想以上に高い割合で存在する
ADHDやLDは15歳未満、6〜12%
HFPDD、ASは1.2〜1.5%
ほとんど養護学校や特別支援学級ではなく、普通学級に在籍している
②ストレス耐性が弱く、不利な環境に対して反応を起こしやすい
ストレスに対する抵抗力が弱く、学校でいじめられたり、家庭崩壊にあるような機能不全家族に育つと、不登校、非行、小児うつ病、心身症などのさまざまな二次障害や合併症を高頻度で示す
③就労と社会適応が難しい
何とか高校、大学まで修了しても、その後の就職と社会適応が困難になる事が少なくない
長期の引きこもりやニートになることもある
成人では、さまざまなな合併症、特にうつ病、依存症、パーソナリティ障害、不安障害を伴うこともある
ADHDはLDを合併しやすい
重度の自閉症は知的障害を合併しやすい
成績優秀な子どもほど、発達障害は見過ごされやすい
軽度(高機能)の発達障害の7割以上は思春期以降に不登校や非行などの二次障害を示してから発見されている
例)
大人のADHDは成人してから発見されている
80症例の内、69例(86.2%)はさまざまな合併症を示していた
※周囲から常に叱責、非難、いじめ、家庭でも虐待、ネグレクト(育児放棄)の対象になっていることもある
その理由として
①知能の著しい遅れを伴わず、学業成績がさほど悪くない、学歴も低くない
②年齢と発達段階によって、障害の現れ方が大きく変化する
③障害の現れ方と経過には大きな個人差がある
④人によってはうつ病などの心の合併症を示す
1990年以降の欧米の研究
小児期にADHDの既往歴を持つ成人の31〜66%が成人しても依然としてADHDの症状を有する
※大人の10人に1人以上はADHDの可能性あり
大人の発達障害が発見されにくい理由
①性格や個性の問題だと誤解しやすい
②症状や病態の変化が大きく、わかりにくい
③専門医が極めて少ない
大人の発達障害で多いADHD
ADHDの特徴3つ
①多動、衝動性優勢型
②不注意優勢型
③混合型
基本的な症状
①多動
いつも落ち着きがなくソワソワしている
幼児期から学童期前半にかけて目立つ
学童期後半から思春期では、徐々に改善
大人になると目立たない
ウロウロ歩いたり、座っても頻繁に姿勢を変える、手足を組み直す、机を指で叩く、貧乏ゆすり、早口で絶え間なく一方的に話す、新規追求傾向、職業を転々と変える、引っ越しを繰り返す、頻繁に付き合う人相手が替わるなど
②不注意
気が散りやすい、集中できない
脳の軽度の機能障害によって、目が覚めている時でも、自分の興味や関心のないことには覚醒レベルが低下して、注意散漫になってしまう、居眠り、時々ボーとする
本人はそのことに気がつかない
大人のADHDは注意散漫で相手の話をちゃんと聞けないので、自分の言いたいことだけを一方的にはなしてしまう
例)
金銭管理が難しい、浪費癖、衝動買いに走りやすい、時間の管理も苦手で仕事や雑務を計画的にできない、片付け、整理整頓ができない、仕事でのミスや失敗が多い
脳の情報フィルターにより、膨大な量の情報から必要なものだけを選んで思考活動を司る前頭葉に伝えられる
しかし、ADHDの人は、このフィルター機能が未熟なため、まわりの騒音、雑音を無差別に取り込んでしまい注意が他に飛んでしまう
だから、先生や上司、同僚などの話に集中できない
③衝動性
後先考えずに思いつきで行動
生涯にわたって持続するもの
物事の善悪や後先のことなど考えずに、思いついたらパッと行動に移したり、すぐに口に出していってしまう
空気が読めない、衝動買い、大酒、ギャンブル、交通事故など
パートナーや子供とのトラブル多い、離婚率高い、家庭内暴力や児童虐待
脳内で分泌されるドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンのうち、特にセロトニンが不足、衝動や欲望をコントロールできなくなるのが原因のため、うつ病やアルコールや薬物などの依存症が多い
④仕事の先延ばし傾向、業績不振
期限が守れず、仕事がたまる
・自分の興味や関心の向いたことを優先
・自分のやるべきことをすぐ忘れる
・新しいことへの心理的抵抗や不安が強い
期限までに仕事ができない、書類や提出物の締め切りに間に合わない、支払い期限を守れない、約束を破るなど
⑤感情の不安定性
大きくなった子供たち
多動、衝動性優勢型
短期で癇癪持ち
理由がないのに、気分高揚する
不注意優勢型
些細なことで不機嫌、気持ちが落ち込む
混合型が多いため、キレたと思ったら、メソメソ落ち込んだりする
PTSDとまではいかなくても、発達障害の人は過去にあった嫌な体験が些細なことでフラッシュバックして不機嫌になったり不快な気持ちになる事が多い
躁うつ病
❶躁状態やうつ状態の病相期と寛解期がはっきり分かれている
❷思春期、青年期以降に発症してくる
⑥低いストレス耐性
心配と不安が感情の爆発を招く
❶人間関係に必要以上に不安や緊張を招きやすい「対人不安」
❷病気のことを心配しやすい「心気不安」
❸親や友人、パートナーなどに依存しやすく自立できない「分離不安」
❹何でも完璧にしないと気が済まない「完全癖不安」
※最近は自分の顔や臭いを必要以上に気にする「醜形恐怖」や「自己臭恐怖」もある
※既婚者で子どものいるADHDの人に限れば、51症例中25症例の49%に児童虐待がみられた
発達障害障害児の場合、親も発達障害者であることが少なくない(モンスターペアレント:理不尽な要求を繰り返す保護者)
⑦対人スキル、社会性の未熟
空気が読めず、人の話が聞けない
❶人との約束事や社会のルールが守れない
❷自己中心的で他者との協調性に乏しい
❸人の気持ちを読んで、場面や状況に応じた対応ができない
❹頭の中で考えていることをうまく言葉に表現できない
❺感謝、反省、共感などの気持ちをうまく表現できない
❻人に助けを求めたり、要求を断る事ができない
❼友人や恋人などとの信頼関係を持続できない
❽いじめや仲間はずれの対象になりやすく孤立しやすい
※他者との喜怒哀楽の感情を共有する「共感性」に欠ける
⑧低い自己評価と自尊心
マイナス思考と募る劣等感
発達障害者は、自分自身を客観的に正しく認識する「自己認知」が苦手、また他者を正確に認識する「他者認知」も不得手
小さい頃から、達成感や成功体験を積み重ねる事ができず、挫折感や失敗体験を重ねて、家庭や学校、職場などで低い評価を受け続けるため
自尊心が育ちにくい理由
・成功体験を積む事ができない
・周囲の評価が低い
・できるのにやらない、怠けていると誤解されやすい
・無理解な親や教師から過大な期待をかけられる
・できたりできなかったりと症状が変動する
・脳機能障害
自尊心を司る前頭葉から基底核、線状態に至る「報酬系ドーパミンを分泌して共感を高める神経系」という部位が未発達で、自己像、自尊心が低くなりやすいと考えられている
⑨新奇追求傾向と独創性
飽きっぽく一つのことが長続きしない
古くからある決められたやり方や手順を嫌い、常に目新しいものや熱中できるものを探して、好奇心の赴くままに外界の刺激を追求する
これは、最も遺伝しやすい部分とされている
※わざとスリルを求めて非常に危険な行動をする人はADHDの可能性がある
※爪噛み、チック、抜毛などの習慣は高確率で合併しやすい
※ADHDの人は、タバコやコーヒーなどの嗜好品に依存、コカインや覚醒剤などの刺激系の薬物に依存しやすい特徴あり
その他の随伴症状
⑩整理整頓が出来ず、忘れ物が多い
仕事ほできるが家事は不得手
11計画性がなく、管理が不得手
低すぎる生活の技術
片付けが大の苦手、時間の使い方も無計画、就寝、起床時間はバラバラ、遅刻の常習者、思いつきで約束したり安請け合いすることも多く、それを守れない
12事故を起こしやすい傾向
大人の発達障害者が、交通事故、産業事故、水難事故などを起こしやすい
特に3つの理由
・不注意傾向
・衝動性
・睡眠障害
13睡眠障害と昼間の居眠り
寝ていても起こる睡眠不足
睡眠覚醒リズムが不規則で乱れやすい
寝つきが悪い、寝起きも良くない、寝相も悪い
14習癖
男性:チック症
女性:抜毛癖
15依存症や嗜好行動に走りやすい
自己投薬したがる脳
物質依存:酒、タバコ、コーヒー、薬物、
行為依存:ギャンブル、買い物、過食、SEX
人間関係依存:恋愛、夫婦間暴力
アルコール依存症はうつ病と密接な関係
脳の前頭葉のセロトニン系の欠乏と関係
近年秋田県では、うつ病の多さと自殺率の高さ全国1位を維持
16のめり込みとマニアックな傾向
男性に多い過集中とこだわり傾向
基本的:技術職、学者、研究者など専門的な知識が生かせる職業⭕️
向いてない職業:書類の管理やお金の管理をするような仕事
対人スキルを必要とする仕事
失敗した時大きな危険を伴う仕事
最も不向きな職業:航空管制官
アスペルガー症候群の特徴
対人関係の未熟
そもそも友達を作る意欲がない
言語コミュニケーションの欠如
会話のキャッチボールができない
こだわり・興味限局傾向
一つのことに異常なまでの興味を示す
感覚、知覚の異常
味覚や嗅覚、触覚と聴覚の過敏
協調運動の不器用さ
スポーツや手先の運動が上手にできない
小脳の発育、発達の未熟性あり
大人の女性の発達障害
目立たないのび太型が多い
特有の五つの症状
家事や雑用が段取り良くできない
自己評価や自尊心が著しく低い
うつ病や不安障害、過食、買い物依存など合併しやすい
しばしば性的な問題を抱えやすい
月経前不機嫌性障害が重くなりやすい
発達障害は万病の元
大人のADHDの代表的な合併症
うつ病 気分障害
双極性障害 躁うつ病
不安障害 神経症
依存症 嗜好行動
行為障害 非行、反社会的行動 犯罪
パラフィリア 異常性愛
パーソナリティ障害 人格障害
チック症、トゥレット症候群(運動性チックと音声チックの併発症状)
学習障害
社会不安障害
人前で電話をかける
目上の人やよく知らない人と話す
会議などで発言したり、意見を述べたりする
多くの人の前で話したり、歌ったりする
状況では、ひどく緊張したり、強い不安に襲われる
手足が震える
大量の汗をかく
息が苦しくなる
動悸がする
顔が赤くなる
声が出なくなる
合う仕事
自分が興味や関心を持つ分野の仕事
自分の得意な能力が生かせる仕事
人を相手にするより物を扱う仕事
を選ぶべきである
毎日変化のある仕事を選ぶのも大事なポイント
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