ワクチンの種類
①生ワクチン
最も歴史のあるワクチンの1つが実際のウイルスや細菌の中から毒性の弱いものを選んで増やした「生ワクチン」で、「弱毒化ワクチン」とも呼ばれます。
毒性の弱いウイルスそのものを体内に入れることで、免疫の働きでウイルスを攻撃する抗体などを作り出します。
生ワクチンは効果が高いものも多く、はしかや風疹など従来からさまざまな病気に対して使われています。一方で、たとえばポリオなどではまれに生ワクチンによって感染したケースがあり、課題になっています。
②不活化ワクチン
不活化ワクチンは、実際のウイルスをホルマリンで加工するなどして、毒性をなくしたものを投与するワクチンです。
季節性インフルエンザのワクチンはこの種類で、新型コロナウイルスでは、国内のワクチンメーカー、KMバイオロジクスなどが開発を進めています。
海外では中国のシノバックやシノファームなどが実用化し、中国などで接種が始まっています。
③VLPワクチン
ウイルスそのものを使わないタイプのワクチンも多く開発が進められています。
「VLPワクチン」は、ウイルスそのものは使わず、ウイルスの表面に出ている突起の「スパイクたんぱく質」を人工的に合成したものを投与します。
「スパイクたんぱく質」は、ウイルスを攻撃する抗体の目印となるもので、人工的に作って投与することで、人に備わっている免疫の働きによって抗体を作り出す仕組みです。
新型コロナウイルスでは、大阪大学などで研究が行われているほか、アメリカなどでは数万人規模で安全性と有効性を確認する臨床試験が行われています。
④組み換えたんぱく質ワクチン
VLPワクチンと同様、ウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」を人工的に作り出すワクチンの1つが「組み換えたんぱく質ワクチン」です。
遺伝子組み換え技術を使って人工的にたんぱく質を作って投与することで、体内でウイルスを攻撃する抗体を作り出します。
新型コロナウイルスでは、国内の製薬大手、塩野義製薬が開発を進めています。
アメリカの製薬会社ノババックスのワクチンもこの種類で、開発が成功すれば武田薬品が国内向けに供給する予定です。
⑤mRNAワクチン
新型コロナウイルスのワクチンでは、人工的に合成したウイルスの遺伝子を使った「遺伝子ワクチン」が世界で初めて実用化されました。
国内で最初に接種が始まったワクチンも遺伝子ワクチンの1つ、「mRNAワクチン」でウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を伝達する物質、「mRNA」を使います。
人工的に作って注射で投与することで、体の中でスパイクたんぱく質が作られ、それに免疫が反応して抗体が作られます。
新型コロナウイルスの感染が広がる前には実用化されていなかった新たな技術で、開発にかかる期間が従来のワクチンより大幅に短縮できるのが大きな利点になっています。
アメリカの製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが開発したワクチンやアメリカのモデルナが開発したワクチンがこのタイプです。
mRNAを使った医薬が実用化されたのはこれが初めてで、日本国内でも製薬大手の第一三共が、開発を進めています。
⑥DNAワクチン
遺伝子ワクチンの別のタイプが「DNA」ワクチンでDNAを人工的に作り出して、ワクチンとして接種します。
投与されたDNAは、体内の細胞の中で核に入り込んでmRNAを作りだし、そのmRNAによってスパイクたんぱく質が作られることで、抗体が生み出されます。
大阪大学発のバイオベンチャー企業、アンジェスのワクチンはこのタイプで、国内では最も早く、実際に人に投与して安全性や有効性を確認する臨床試験を始めています。
⑦ウイルスベクターワクチン
ウイルスのスパイクたんぱく質を作る遺伝子を、無害な別のウイルスに組み込んで、そのウイルスごと投与するワクチンです。
無害なウイルスが細胞に感染して、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作りだし、抗体が作られます。
イギリスの製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンやアメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン、それにロシアの研究機関が開発したワクチン、「スプートニクV」もこのタイプです。
日本国内でもバイオ企業のIDファーマが開発を進めています。
(2021年2月16日時点)
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